しかし、出会いさえすれば化学反応が生じるわけではない。
物質世界に安定が見られるのも、やたらと化学反応が生じていないからで、分子と分子が衝突するたびに反応していたら、この物質世界は混沌とした状態となってしまう。
化学反応が生じるには、相性とエネルギーが重要だ。
AとCなら反応が生じる可能性があるが、AとGではどんな状態にしても反応しないということがある。
また、混ぜれば必ず反応が起きるわけではない。化学反応が起きるには活性化エネルギーという反応が進行するために最低限必要なエネルギーを有していないといけないからだ。
これは、組織の発展段階と非常に相関がある。
ブルース・タックマン(Bruce W. Tuckman)博士による「チーム発達の段階」説によると、チームや組織は、
- 形成期:Forming
- 混乱期:Storming
- 統一期:Norming
- 機能期:Performing
- 解散期:Transforming
大切なのが、2番目のStorming(混乱期)をくぐり抜ける必要があること。この段階は、チームメンバー自身が自分たちが衝突の中にいると気づくことから名付けられたそうです。メンバー間で主導権争いを繰り広げたり、十分に役割を果たしていないと思われているメンバーが存在していたりします。期待したほどのスピードで進歩しないことにチームはいらいらしている状態です。個人間、チームリーダー、あるいはチームの役割に関して交渉が行われます。この段階は、新しい解決策の創造性、衝突、およびフラストレーションといったものに特徴付けられます。
混乱期というのは、チームメンバー同士が高いエネルギー状態で葛藤を繰り返し、それを乗り越え、統一期へ至るための避けることのできない段階であり、この段階を乗り越えるためのエネルギーが、すなわち活性化エネルギーなわけです。チーム内に十分なエネルギーがなければ、混乱期を乗り切るための必要エネルギーに満たないため、統一期へと至ることはできず、チームの成長は頓挫してしまいます。
混乱期を表面的に取り繕って、成果をあげようとしても、とりあえず形式的なものは満たすことができるかもしれませんが、チームメンバーの実力が発揮されず、成果をあげるような化学反応は生じません。
この考え方は、組織だけではなく、自己の成長にも応用できるかもしれません。
一切の衝突も混乱もなく吸収できた知識や能力よりも、混乱と不安を乗り越えて手にした知識や能力の方が、自分の血となり肉となっていることを実感する機会が誰しもあったと思います。特に成長するためには、過去の成功体験をUnlearnして、すなわち一度消し去って、ゼロベースで学び直すことが求められます。このときに、自分の知らなかった知識や事例などで、思いっきり打ちのめされると、より深いレベルでの理解や習得が可能となります。
すなわち、居心地の悪い状態を自分の努力で居心地の良い状態へと変えることを繰り返すことが、自身の成長には大切ではないかと思っています。これは、高い活性化エネルギーを消費して、新しい化学反応を繰り返したことにつながり、質的な変化を起こすことに成功できたということではないかと思われます。
